
大量に摂取したアルコールを完全に分解するのには時間がかかる。今日も昼頃まで寝ていたが少しけだるい。健康的なチコはもうプールで泳いでいた。その体力が羨ましい。 「きっと、あれだな。今ごろ、G-SPOTの控え室に張り出されている店の売り上げを書いた折れ線グラフは、紙が足りなくて、つけ足してあるんじゃないかな。いつもガラガラのG-SPOTを支えている、極太の客ですね」
昨夜の豪遊っぷりを報告すると、チコは悪戯な笑みを浮かべながら、そういった。小生はプールサイドのデッキチェアーに横たわって、大きく息をついた。昨晩のチコは、アリバイの女二人に担がれてディスコに行ったはいいが、箱はガラガラ何の盛り上がりもなかったようだ。そして2人のうち1人を帰して、残した方とさっきまでいたようだ。旅も4日目ともなると疲れも出てくる。小生は泳ぐこともできずに、ただただ疲労回復に努めた。いったいバンコクまで来て、なにをしてるのだろうか。酒を飲むだけだったら、どこでもできるのにな。
さて、今夜は、なんとジーダイアリー編集者との会食の予定があったのだ。一昨日お会いした、あわゆきさんが紹介してくれたのだ。小生にとってジーダイアリーとは「いきり立ったが吉日」と題した旅の原点であり、バイブルでもあり、創刊号からの熱心な読者の1人でもあるのだ。思い起こせば、2年前、感極まったチコと小生はアポなしで当時タニヤにあると思われていた編集部に突然訪問したのだが、残念ながら、もうその時はすでにラチャダーへと移転していた。それが今年はちゃんとアポもとれて、食事までご一緒させていただけるというのだから「いきり立つ」。夜8時にタニヤ入口で待ち合わせることになっていたので、それまでには体調を万全にしておかなければ。
午後からはお土産を買いにサイアムスクエアのMBKに行くことにした。ここに行けば大抵のモノは揃う。民芸品からパチモノのヴィトンやグッチまで。しかもこのパチモノのヴィトンが意外と評判がいい。たった400バーツ(日本円にして1200円程度)でかなり精度がいい財布が手に入る。小生はモチロン愛用もしている。人から「いいね」と褒められると、「そうだろ。タイで1200円で買ってきたんだぜ。小生は安くていいモノを見つける買い物上手なんだ」とよく言ったもんだった。
「ヴィトンあるかい?」
店員にそうたずねると、奥から丁寧に包装されたヴィトンの新作がわんさか出てきた。
「じゃ、コレとコレとコレだな。いくらだい?」
「1つ600バーツですよ」
「おいおい、待てよ。オレは知ってるんだぜ。昨年は400バーツだったハズだ。お前のことも、ちゃんと覚えている」
「アチャ~、ダンナには敵いませんや。でも、今年は500バーツでお願ぇしますよぉ」
ちなみに、ご丁寧に旅の餞別までくれた会社の先輩には2年連続で同じモノを買った。使い道のないカエルの置物をね。小生、人の好意を踏みにじる事に関しては得意中の得意なのさ。 買い物を終えてホテルに帰ってきた時にはもういい時間になっていた。何がいい時間かだって? そりゃ酒を飲むのにさ。身体からアルコールが抜けた瞬間から、欲する。さすが、アル中。でも、今夜はジーダイの編集者との会食もあったので、飲みすぎるわけにはいかないな。でも、軽く一杯くらいならいいだろう。まだ、4時頃だったが、今日もまたアリバイをのぞいてみることにした。
ここはもう小生の住処同然だ。小生を歓迎しない者など1人も居ない。早速ハイネケンを注文すると、わざわざ5人で1本のハイネケンを持ってきた。そして、ペイバーを迫ってくる。ドリンクを奢れと恐喝する。ゲームで遊ぼうと恫喝する。もう手足が生えたATMに見えるんだろうな。奢ってやりたいのは山々だけど、本当に金を遣いすぎていた小生は、酒を奢れというウエイトレスの恫喝を一度は断ると、なんと、その女は小生の口の中に舌を突っ込んできた。
ディープキスってやつだね。ハイ、どうぞ! お好きな物をお飲みください! これだから貯金も家も車も持ってないんだろうな。刹那主義者だからね。だって、ディープキスまでされて、もう一度断れるかい? 男はつらいよ。そんなこんなで、結局3時間くらい飲んでたかな。丁度ホロ酔い加減になった時に、そのウエイトレス5人くらいが、明日の晩飯にタイスキを食べに連れて行ってくれとねだってきた。
いいよ、いいよ。酔っ払っている小生には、それしか言えないよ。とりあえず、明日5時にアリバイに集合して、ロビンソンにあるタイスキ屋に晩飯を食べに行くという約束をして会計した。今日は人と会う約束があるから、タニヤに行かなきゃならないと言って店を出た。
チコとは7時半にホテルのロビーで待ち合わせることになっていたので、その前にG-SPOTを覗いてみることにした。丁度オープンしたばかりの7時。アリバイのように、みんなが小生を歓迎してくれたが、先程と同じように8時にタニヤに行かなきゃいけないから、1杯だけ飲ませてもらって、また後で来ると言ってここも後にした。
ホテルのロビーでチコと再会すると、BTSに乗ってタニヤに到着したのが丁度8時。すでにジーダイ編集者のMさんは待っていてくれていた。感動の対面だった。Mさんはスラリと背が高く、腰が低い丁寧で、且つ、男前な人だった。そして、Mさんの案内でタニヤにある日本料理店で会食をすることとなった。Mさんは本当に面白い人でジーダイの裏話から、なぜ、タイで働くこととなった経緯などを淡々と話してくれた。
どうやらMさんも、学生時代に『深夜特急』の虜になり、以来、アジア各地、しかも辺境の地などを旅して周っていたらしい。一時は日本の大手出版社で記者もしていたようだが、思うところがあって、タイに死に来たと、これまた淡々とした口調で話していたのには驚いた。小生、今まで色々な人と会ってきたが、Mさんの持つ静かに燃える電熱コイルのように、見た目の印象とは裏腹にうっかり触れば火傷しそうな人は、初めてだった。宴も半ばに差し掛かったころ、ジーダイのカメラマンも遅れて合流してきた。
そして、この人もまた、凄まじかった。小生にいわせれば、〝自称変態〟と名乗る野郎にかぎって、小生の足元にも及ばないヤツが多い。ただ、この人は違った。別に、変態と名乗っていたわけではないが、小生をも驚愕するようなパワーを持った人だった。まず、ノーマルで綺麗な女性にはあまり興味がないらしい。どちらかといえば、ババァか、もしくは、完全なロリ。もしくは、綺麗なんだけど、少し太っていたり、多少なにかしらの傷があった方が燃えるとのこと。
これには、目から鱗が500枚くらい落ちた。小生、ゴーゴーバーやマッサージパーラーに行っても、なるべく可愛かったり、綺麗な女性を血眼になって探したもんだが、不思議と、このカメラマンの性癖には、妙に共感を覚えてしまった。憧れだったジーダイの方たちとお会いできた事や、久しぶりの焼酎についつい嬉しくなり、どんどんと体内においしいお酒が吸い込まれていった。楽しいひと時だった。
また、きれいに割り勘というのも、気持ちがよかった。そして、店を出た後に、Mさんがトゥクトゥクを拾ってくれたのだが、日本人とみるやふっかけてきた金額に、タイ語で物凄い剣幕でクレームをつけてくれて、このトゥクトゥクには乗るなと、アドバイスまでしてくれた。最後まで、本当にいい人だった。結局、チコと小生は、メータータクシーに乗ってナナプラザまで戻ると、我々のホームグランドのG-SPOTに向かった。 2階へと続く止まったままのエスカレーターを上ろうとすると、昨夜の日本人2人組が待っていた。
「あー、やっと会えた。ずっと、探していたんですよ」
なんだ、悪いことしちゃったね。でも、その義理堅い日本人気質が好きだよ、ニシオカ君、タカハシ君。よし、今夜は日本人4人で男祭りだ。G―SPOTでは、なにもいわなくてもジャックソーダが自動的に小生の前に運ばれてくる。勿論、DJブースの前のVIP席を用意しておいてくれてね。こんな居心地のいい所はないよ。今日もすっかり大暴れしたところで、音楽が止まり、店の照明が明るくなった。
閉店だった。時計を見ると午前2時。小生はね、夕方4時頃から飲み始めてたもんだから、10時間くらい飲み続けていたことになる。完全に酔っ払っていた小生は、もう少し飲ませろとクダを巻いたが、最近は警察の見周りが厳しいから、お引取り願いたいといわれてしまった。金さえ払えば主任だって社長と呼んでくれるのに、地元警察当局には勝てなかったようだ。
せっかくニシオカ君とタカハシ君も一緒な訳だし、ここは退店してテルメーカフェを覗きに行くことにした。ニシオカ君とタカハシ君は、明日朝一番の飛行機でカンボジアに旅立つらしい。ならば、タイ最後の夜をもう少し楽しんでもらいたかったのだ。ただ、テルメーカフェも、すでに閉店してたけどね。やっぱり午前2時がリミットらしい。
店の前には、あぶれた男と女が行きずりの駆け引きをしていたが、我々4人は屋台のテーブルを1つ占拠すると、今夜最後の乾杯をした。途中でナナから帰宅途中のオカマが、小生たちに気づいて、手を振ったりね。このタカシ君とタカハシ君は、やっぱりバックパッカーで、お互い1人で南米を旅していた時に、ブラジルのサンパウロでバッタリ会って、そのまま意気投合して、今度は2人で旅するようになったのだと話してくれた。
世界広しといえども、リュック1つで格安な旅を続けている人間には、砂時計のくびれのように、必ず、どこかですれ違う場所がある。それがバンコクであったり、インドのデリーやベナレスであったり、トルコのイスタンブールやブラジルのサンパウロであったりと。
そして、お互いの旅の健闘を誓いあったり、情報交換をしたりするものだ。この2人は、チコと小生の遊びっぷりに感動してくれたが、それと同時に、サンパウロはよかったから、是非一度行ってみてくださいと、アドバイスしてくれた。ちなみに、リオデジャネイロはマフィアと警官が真っ昼間から銃撃戦を繰り広げているから、とても危険だとも助言してくれた。アドバイス、ありがとう。ただね、サラリーマンにとって、片道20時間もかけて旅することは難しいんだよ。5日間くらいの夏休みを使っての旅だから、どうしても近場にしか行けないんだよ。
でも、いつか、すべてを捨てて、会社を辞めたら、サンパウロに行ってみるからね。我々は、最後のハイネケンを飲み干すと、お互いの旅の成功を祈って、アドレスを交換して別れた。グッドラック。
屋台から歩いて帰る途中、チコが道端でゲロゲロと吐いていた。今夜もずいぶんと飲んだからね。そういえば、今日はまったくペイバーもしなければ、ソープにも行かなかったね。
小生の性欲は一体何処に行っちゃったのよ。今夜が小生の淡白宣言。
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